瓶売り無、樽売りも無、パブも無の醸造所!?==ドイツビール紀行2009(その34)==
その醸造所Kommun Brauerei in Sesslachと言い、金曜日の午後だけ3時半から6時までの僅かな時間だけ開いています。と言ってもここで飲むことは出来ず、販売のみです。
さらに、この醸造所に面している小さな路地は、この開店時間中は、
「ビール購入者以外の通行禁止」となる、世界でも珍しい道路です。
Kommunはフランス語でいうコミューン(Commune)。ヒッピー全盛の頃、米国あたりでは社会から外れて共同生活をしているような農園なんかをコミューンと呼んだそうですが、元々は最小単位の行政を指す言葉です。
コミューン醸造所は、すなわち「集落の醸造所」という意味になります。
そして、この街のそれは、何と創業が1335年!!まさに地域に根付いたビール文化の拠点です。
↓へ続きます。
コミューン醸造所として考えられるのは、
1)各家庭で作る自家製ビールの設備を共同で設置。交代でそれらを使用。
2)上記1)にに加え、醸造家を共同で雇入れ、彼に醸造を任せる。
の2点です。
Sesslachの場合、その形態は2)に近く、現在では集落内にある2軒のガストホフ用のビールと、ここでの販売用のビールを醸しています。
前述の通り、醸造所内にはパブ等はなく、ビールを飲むならば前回紹介したこの2軒で飲む訳です。
そして、この販売というのがまた特殊中の特殊。
何と、瓶売りどころか樽売りすらしていません。
ではどうやって売っているのかと言うと、「量り売り」です。
客は各自容器を持参して来店し、ビールを詰めて帰ります。
流れとしては、ビールを求める車が到着すると、窓からヒョコっとブラウマイスターが顔を出します。ここで何L購入するかを申告すると、何と窓からホースが出されます。
ここで、ビールを直接タンクから樽へと詰めます。
小さい樽の人は、醸造所内まで樽を持ち込んできます。
皆常連サンであり、マイスターと世間話をしながらの給水、いや給ビールタイム。
これらのお客さん、こんなに買ってどうするのか、と聞くと。
「近くの村でガストホフをやっているのだよ」
と教えてくれました。
一週間分のビールをここで仕入れ、毎晩毎晩村人の喉を潤している、と言う事です。
ブラウマイスター自身は、実は小さな醸造所を持っており、週に一度だけここにやって来て醸造と販売を行っているとの事です。
基本的な設備は古く、麦芽を挽くミルなんかもかなりの年代物。モーターの力で2階に貯蔵されている麦芽を、最上階までパイプスルーで持ち上げます。
前任者の時は、煮沸釜がまだ薪で火を起すタイプだったため、まずはその設備の入れ替えが最初の大仕事だった、と話をしてくれました。
販売方法も変わっていますが、ビールもドイツでは珍しい開放型プールで麦芽を冷やし、天然酵母を少し混じらせるという物。
そして、ノンフィルターで出されるビールですので、もちろん日持ちはしません。
やはり醸造所の周辺で飲むのが唯一無二の方法となりましす。
友人と、ある友人のオヤジさんの二人が僕の訪問を連絡してくれていたらしく、
「今日は日本人が2人来ると思ったけど、何だ君の事だったのか」
と記念撮影。
フランケンのド田舎で「究極の中の究極の地ビール」を見つけた一日です。
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コメント
すごい
これは究極のビール文化ですね!
ビールは生活の一部ですね
日本で例えるならお味噌汁みたいなものでしょうか
投稿: ビア | 2010年12月15日 (水) 22時29分
ビアさん>
そう、生活の一部です。
味噌汁というよりも、地元の豆腐屋さんみたいな物かと思います。
投稿: 小林麦酒 | 2010年12月19日 (日) 05時48分