Coburgのソーセージ
旧市街へ行ってみる。
先ほど合流した運河沿いの自転車道を、今度は直進していくと広場に出た。
ここに自転車置き場があったので、持参したチェーンキーで縛り付けて駐車し、徒歩で旧市街へ入る。市街への入口はSpital門だ。
歩行者天国となっているSpital Gasse(Gasse=横丁)には全国チェーンのデパートをはじめ大小様々な商店が並び、まだ午前中だというのに結構な人通りがある。時々見かけるレストランや居酒屋の看板には、先ほどの「Coburger Pils」が掲げられている事が圧倒的に多く、委託醸造となってもこの街のシンボルであることには変わりないことがわかる。
さて、この街に来たのはビールの為だけではない。ソーセージだ。
ドイツではソーセージの名前に地名が付く。フランクフルト、ミュンヒナー、チューリンガー、ニュルンベルガー・・・・、そしてコーブルガー(Coburger)。コーブルクのソーセージだからコーブルガー。
フランクフルターはじめ全国的にも有名なソーセージは、駅のスタンドでも街の軽食スタンドでもどこでも食べられる。
しかし、Rudiが言うに、コーブルガーはコーブルクでしか食べられないらしい。
「それは不味いからだ!わははは。」
と彼は言うが本当だろうか?
それを確かめたくなった。
門から100m程歩くと街の中心であるPrinz-Albert-Denkmal Marktへ出た。
グルリと囲む様に中世からあるような建物が並び、市庁舎やその地下には昔からのレストランRatskeller(ラーツケラー)はもちろん、現代の定番マクドナルドもある。
広場の入口付近に一台の屋台が停まっている。屋台といっても車で引っ張る形の小さなワゴン車で、その煙突からはモウモウと煙が出ている。ここで焼かれているのがコーブルガー・ソーセージだ。
広場から多方面に伸びている小さな横丁には、おそらくたくさんのソーセージ屋があるのだろう。
古い店先で煙りを立てて客を呼び込む様なソーセージスタンドを探してみたい。
通りかかった人にちょっと声を掛けてみた。
「ニュルンベルクみたいに、歴史的なソーセージの店とかないですか?」
「う〜ん・・・知らないなぁ・・・。」
ちょっと横丁を散策してみると、ツーリストインフォメーションがあった。
ドアを開け、パンフレットをもらうついでに聞いてみた。
「すみません、あなたにとって、個人的にオススメしたいソーセージ屋さんはありますか?」
「ソーセージなら、そこの広場に出ている屋台が一番だよ。何て言っても炭火で焼いているしね。車は新しいけど、ずっと昔からあの場所で屋台で売っているんだ。あれこそがコーブルガー・ソーセージの店だよ。」
なるほど、そういうことか。
ボフボフボフ・・・・ジュー。
屋台の中から音が聞こえる。先ほどのインフォメーションのオジサンが言ったとおり、ソーセージを炭火で焼いている。
時々木製の蛇腹式送風機で風を起こし、火を強くしているのだが、その音が「ボフボフボフ」である。
火が強くなるとソーセージがより加熱され、その脂が炭に落ち「ジュー」と煙をたてているのだ。
コーブルガー・ソーセージを注文した。
オバサンの一人がパンに熱々のコーブルガー・ソーセージを挟んで手渡ししてくれた。
まだ音がジュウジュウと鳴っているほど熱い。
「そこのマスタードを好きなだけ掛けていってね」
広場の真ん中にある銅像の台座に腰掛けてソーセージを楽しむ事にした。何となく、人の視線を感じる。
同じようにソーセージを食べている人も何人かいるが、やはり広場にあるマクドナルドのハンバーガーを頬張っている人の数が多いのはちょっと寂しい。
ソーセージは普通、パリっとした皮を頬張るとジュワーと肉汁が出てくるが、コーブルガーはそれほど肉汁が出てこない。
何となくゴワゴワっとした食感がある。
最初は「ん?」と思ったが、近くで食べている人は何の疑問もなく食べている。服装は普通のサラリーマンっぽいので、おそらくこの近くで働いている人なんだろう。
元々コーブルガー・ソーセージはこのような食感らしい。
後でRudiに聞くと、食感はあんなもんだ、という。
「なぜチューリンガーやニュルンベルガーの様に全国区にならなかったか解るか? あんな食感だからだよ。がははは。」
とRudiは笑う。
しかし、全国区ではなくても、街の名を冠したソーセージが存在し、街の中心で古くから営業している屋台があることは素晴らしい事だ。あのパリッとした皮は、やはり直火焼きでなければ味わえない。
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