怖いオジサン達の横をすり抜けて・・・
小都市ForchheimのSattlertor通りは、同じ通りのほんの数十mの間に、奥からBrauerei Grief、Brauerei Hebenganz、Bauerei Nederと3軒が軒を並べている。これだけの密集地も珍しい。
「どれにしましょうか神様の・・・」
と小学生の様な決め方をしたら、指は「Brauerei Hebendanz」を示して止まった。
まず潜入(?)する醸造所が決定。
強面のオジサン3人組がいるテラス席を抜け、重いドアを開けたら、この辺りの醸造所に多くある、軽く飲む人の空間があった。
手前に大きなテーブルがひとつ、そして奥にはビールのセルフサービススタンドがあり、その横には立ち飲み用の円筒型テーブルが置かれている。
ドアが空くと共にその立ち飲みテーブルでビールを飲んでいる男達の目がギロリとこちらを睨んだ。捲し上げたTシャツからは、入れ墨が彫られた太い腕が見え、深めに被った帽子からは長髪が垂れており、ピアスで埋め尽くされた耳を隠している。
一瞬ビビったが、さすがにドアを閉めて引き返す訳にはいかないので、そのまま彼等のテーブル前にあるカウンターでビールを買いに行く。
彼等の前を通らないとカウンターには近づけない。さらに、そのうちの一人に退いてもらわないとビールは買えない。カウンターとテーブルが近過ぎるのだ。
ビビリながらも平然とした顔で近づき、自分でも意外な言葉を発した。
「オジサン、これ何飲んでるの?」
僕は驚いた事に、長めの口髭をしているオジサンの飲んでいるビールを指さし、ビールの種類を聞いた。
「ヘレスだ。最高のヘレスだ!」
とオジサンは親指を立ててウインクした。なんだ、普通のオジサンじゃないか。
「オレはピルスだ。今日はピルスが樽に繋がっていないので、瓶だけどな」
他のオジサンはビール瓶を手に持ち、こちらに掲げてきた。
樽に繋がっているビールを飲むのが基本だから、僕はヘレスを注文しよう。
注文しようと思い窓口を覗くが誰も居ない。オジサンの一人が
「お〜い、客だぞ!」
と大声で叫ぶと主人の息子らしき青年がやって来た。
「ヘレスを一杯、シュニット(半分くらいの量)で」
と注文すると、彼と僕の背後にいるオジサン達がほぼ同時に声を上げた
「シュニット?!何故だい?」
こちらはここで飲むだけでなく、この街の醸造所のビールを全て飲む為にやって来た事を告げると何だか納得したようで、一杯のヘレスが出てきた。
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