ビールと共に牛肉の薫製を!
オバサンの家からBrauerei Krugへは目と鼻の先である。
もう一杯飲みなさい、というオバサンの薦めを何とか逃げてきた。
この醸造所は1820年創業の小さな醸造所で、先ほどのビアガーデンを持つBrauerei Giessよりも50年ほど古い。
特に大きなビアガーデンを持っている訳ではないが、ガストホフの前の道路よりも一段高いテラスに、小さいながらも清潔なビアガーデンを持っており、少人数でゆっくり飲むときなどに気持ち良さそうな雰囲気だ。実際、2〜3人のグループがのんびりとビールを愉しんでいる。
敷地の奥には、納屋の様な古い木造の建物と家族の住む離れの様な建物が並び、家庭的な醸造所らしい雰囲気を醸し出している。
ここのビールは外へ出荷される事がなく、このガストシュテッテで飲むしか楽しむ方法が無い。そう考えると、何だかありがたいビールだ。フランケンには、この様に瓶売りさえもしていない醸造所が多くあり、彼等の経営しているガストシュテッテやガストハウスでしか出していない。決して全てが美味いビールと言うわけではないが、この地でこの様なビールを飲むことが出来る幸せを感じずにはいられない。
ジョッキを持ったオジサンが現れ、カウンターでビールを一杯注いでもらい帰っていった。近所の人が家で楽しむビールを買いに来たのだろう。チビチビとビールを飲みながら、オジサンは路地に消えていった。
「Zwetschgenbammesを食べると良いわよ」
先ほどのオバサンがこの店の名物を薦めてくれた。この地方でよく食べられているブロートツァイトのひとつで、特にこの店自家製の物は最高だと言う。やはりこういう情報は現地でしか手に入らない。財布を拾ったからこそ手に入った情報であり、礼に貰った20ユーロなんかに比べてもずっと嬉しい。
カウンターでビールをサービングしていたブラウマイスターの奥さんだろうか。彼女が向こうにいるグループに食事を運んでいたので声を掛けて注文をする。
「Zwetschgenbammesをください」
「?・・ナイン、Zwetschgenbammes!」
笑顔で発音を直され、
「そ、それそれZwetschgenbammes」
と僕も直された発音を繰り返すが、直した所で正確な発音は出来ないのは当たり前だ。フレンキッシュ(フランケン方言)はとても難しい。
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